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大ヒット作の後は「駄作」になる理由

Posted June. 08, 2019 07:38,   

Updated June. 08, 2019 07:38

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「一気に耳目を集めた監督ほど、後続作品には要注意です。下手すると大きな痛手を負うこともありますから。」長年、映画とドラマに投資してきた業界関係者の言葉だ。先日交わした会話で、なぜかこの部分が脳裏に焼き付いた。監督ご本人の考えは違ったりするので、具体的な作品名は明かしたくない。しかし、この瞬間も一時、売れっ子だった方々の失敗例は続いている。監督だけでない。作家さんも然り。

咲いた花は散るもの。成功した後に失敗が続くのは当然のことかもしれない。しかし、もう少し掘り下げて考えてみると、意外な教訓が得られることもある。失敗の原因を裏返したら成功の秘訣になるからだ。

大衆向けの芸術で、成功した後に失敗例が生まれやすい最も大きな理由は、自分は何でもできるという行き過ぎた自信、すなわち一種の「全能感」が生じるからだ。酷い場合は傍若無人になる。心理学者は「成功によって権力を手に入れると共感能力が落ちやすい」と説明する。

大衆向けの芸術では文字通り、大衆の共感こそ成功の基本要因だ。「このように作ったら大衆はどのように受け入れるのか」ということを引き続き意識しながら作品を練る。共感能力に欠ける人が大衆の心を読むことはできない。当然ながら失敗の道へ一直線だ。

加えて成功したことに自惚れて、スタッフを無視したり、ぞんざいに扱うようになったら結果は火を見るより明らかだ。映画やドラマは共同作業による集団創作だ。制作過程に不協和音があった作品が高い評価を得た試しがない。

精神健康医学科のチェ・ミョンギ専門医によると、人が人の話に耳を傾ける動機は二つあるという。同情心(共感能力)と恐怖心だ。同情心あるいは共感能力のある人は、権力を握った後も引き続き他人の話に傾聴する。しかし、人の話を恐怖心から聞いていた人は、力を手に入れると態度は豹変する。彼らは結局、独り善がりになってしまい、墓穴を掘る。

ある人は小さな成功に満足して、現状に甘える。まるで、それが全てであるかのように。このような人は過去の栄光と知識で今を生きようとする。「俺が若かった頃はな~」ではじまり、自慢をひけらかす人を指して、若い人は「うざいオッサン」と呼ぶ。

今のテレビ業界には昔、絶好調だったディレクターや作家さんの作品が「ドラマ枠」をいただけず、さ迷っている姿を見ることがある。ひょっとしたらと思って1話分の映像を見てみると、案の定20~30年前の古いスタイル。残念極まりない。

このような成功の罠を避けるにはどうしたらいいのか。原因同様、解決策もシンプルだ。人の話に耳を傾けることだ。客観性を保つか、正気を失わぬよう頑張るのだ。

「ショーシャンクの空」を書いたスティーブン・キングは、世界最高のベストセラー作家の一人。彼の本は3億5千万部売れた。キングはまた、無一文から成功を手に入れた人物として有名だ。彼が2才の時、父親は「タバコを買いに行く」と言って家を出たきり、音信不通となり、貧しい生活を強いられる。大学卒業後は就職ができず、自身はクリーニング屋で、妻はドーナツ屋で働く。キングが成功の罠に陥らなかったのは、常に他人の意見を伺い、客観的な「品質管理」をしていたからだ。彼は初稿を書き上げると、必ず4~8人の知人に原稿を送り、意見を聞いた。

中国元・明の交代期に書かれた「郁離子」には「小人は、災いと福とが隣り合わせで潜んでいることに気付かない。だから幸運はいつもそこにあると思う。失意は得意からくる。」という話がある。小さな成功に酔ったり、勘違いして思い上がると決して重責は担えないのだろう。


李恩澤 nabi@donga.com