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反文明的な文明高校への脅し

Posted March. 08, 2017 07:52,   

Updated March. 08, 2017 07:55

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米国の著名な論客クリストファー・ヒッチェンズ氏(1949~2011)は、大衆にごまをすらないことをモットーとした。著書「宣教師の立場 マザー・テレサの理論と実践」のなかでは、世界の人々から崇められているマザー・テレサにさえ足払いをかけた。1981年、ハイチに行ったマザー・テレサは、独裁者「デュヴァリエ」に賛辞を惜しまなかったという。寄付金を出した詐欺師が法廷に立ったときは、寛容を要請したが、被害者らにお金を返しなさいという要求には口を固く閉ざしていた。

◆ヒッチェンズ氏は2001年、マザー・テレサの列聖を巡る賛否意見聴取の過程で、この本をもとにローマ法王庁に反対根拠を示した。いわゆる「悪魔の報道官」の役割だ。これは、多数の意見に流されないための法王庁の長い伝統である。多元主義を信奉していたヒッチェンズ氏が、もしこの地に生まれていたなら、早目に「絶筆」を宣言しただろう。

◆韓国社会には、考えの異なる他者を非難して、脅かすことが日常茶飯事となっている。全国5566の中高校の中で唯一、国定歴史教科書研究学校に指定された慶北慶山市(キョンブク・キョンサンシ)にある文明(ムンミョン)高校を巡る衝突がそうだ。合法的手順に基づいて研究学校を申請したが、反対勢力の度を超す脅かしに、入学式も混乱の中で行われた。全教組などから校長室に訪ねてきて、激しく抗議する一方、「研究学校指定撤回対策委」は、ろうそく集会を開いている。学校側は、担当教師が国定教科書では授業ができないと主張したため、期間制教師を募集している。同じ財団の文明中学も、国定教科書を補助教材として申請したことが伝わり、幼い中学生までがとばっちりを受けるのではないか気になる。

◆国定教科書は、歴史教育の退化という批判から自由でいられない。批判はいくらでも可能だ。ただし、「私は絶対に正しく、お前は間違っている」という、独善にとらわれて多様性をすっかり踏みにじる方式が問題だ。少なくとも教育者なら、ジョン・スチュアート・ミルの言葉を振り返る必要がある。「ただの一人を除き、すべての人類が同じ意見であり、その一人だけが反対意見を持つとしても、人類にはそのただ一人に沈黙を強要する権利などない」。民主的手続きと、他の考えを尊重しない教育現場で、子供たちが何を見て学ぶのか恐ろしい。