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こんなきれいな死体なんてあるわけがない

こんなきれいな死体なんてあるわけがない

Posted July. 16, 2007 03:26,   

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夏にはホラー映画を見るのも涼を求める方法の一つだ。特に、今年の夏は、病院を背景にしたホラー映画が多く上映中であったり、封切を控えている。

とりわけ、韓国映画が目立つ。「解剖学教室」では、解剖学実習用の遺体を指す「カダバー(cadaver)」が生きて動き回る。「リターン」では、手術中に意識が戻る「睡眠中の覚醒」のショックで殺人鬼が誕生する。「黒い家」では、人を殺しても表情に何の変わりもない「サイコパス(Psychopath)」が登場する。映画では劇的な効果のため、ある程度の誇張やゆがみはありうる。でも、これらの映画で紹介されている医学的な知識のなかには、正しくないこともずいぶんある。医学的な側面から、これら映画の虚と実を見てみよう。

●若い死体は事故死や自殺がほとんど…実習用としては不向き

「解剖学教室」に登場するカダバーは、若くてきれいな女性の死体だ。皮膚の下を流れる青白い静脈やメスを入れるとざあっと流れ落ちる液体が、スクリーンのなかで生々しく映し出される。映画会社が特殊製作したカダバーが使われた。

しかし、実際に、医学大学生たちが実習用として使うカダバーのうち、若いカダバーはきわめて少ない。老衰や持病で亡くなった人の死体がほとんどだ。

解剖実習用のカダバーは外見上、ダメージを受けていない状態を保っていなければならないためだ。若い人の死体は、事故死や自殺による場合が多い。事故死なら事故のため、自殺なら解剖検査のため死体が多くのダメージを受けている場合がほとんどだ。病院での死体寄贈担当者たちは、「若いカダバーは、数年に一人ぐらいだ」と話した。

「カダバーのうち80%が変死体や縁故のない死体」という映画ポスターのコピーも、実は間違っている。遺族の同意がなければ、死体をカダバーとして使うことはできない。かつては、縁故のない死体を使ったりもしたが、いまは、遺族の同意を得て寄贈された死体のみがカダバーとして使われる。

また、実際のカダバーは、青い静脈も見えない。血液を完全に抜いて、腐らないように防腐液を注入するため、静脈は青色を帯びない。また、映画の中に登場するカダバーは血色がいいが、実際のカダバーは、古い丸太のように黄色みがかっている。

●手術中の覚醒?まさか、麻酔がきかなかったことだろう…

封切を控えている「リターン」の主人公は幼い頃に「手術中の覚醒」状態を経験し、その精神的なショックのため、冷たい殺人鬼と成長する。手術中の覚醒とは言葉通り、手術の途中に意識が戻ることをいう。

もちろん、手術中の覚醒現象がまったくないわけではない。外国では1000人に一人や二人が手術中の覚醒状態を経験したという調査結果もある。

手術中の覚醒は、高齢の重患者や体力が弱って麻酔剤を多めに投与できない時に起こりかねない。帝王切開する妊婦もたまには経験する。おなかの赤ちゃんのため、麻酔剤を多めに使えないためだ。

しかし、この映画でみるように、「手術のすべての痛みは感じるものの、体は動けない状態」になれる可能性は極めて低い。強い麻酔状態に置かれるため、痛みを感じないうえ、手術途中の人々の話し声や機会の動く音をはっきり聞くのはさらに難しい。

専門家たちは、「意識があって痛みを感じるのは、手術中の覚醒状態ではなく、麻酔がきちんと効かなかったためだ」と説明する。

●「サイコパス」という言葉はもはや本のなかでのみ…

「黒い家」に登場する「サイコパス」とは、人を残忍に殺害していながら、何の罪悪感も感じない精神病患者を指す言葉だ。他人の苦痛への共感能力をつかさどる前頭葉に問題があるときに生じる病気だ。いわば、「人の心を持っていない人」だ。

サイコパスは、身近なところでよく目にすることができる。普通の人の顔をしているが、にせの名前を使って繰り返してうそをつき、自分の利益や快楽のためには何の罪悪感も感じず、人をだます詐欺性を持っている。

最近の精神医学界では、サイコパスという言葉をあまり使わない。その代わり、「反社会的な人格障害(Antisocial Personality Disorder)」という用語がより多く使われている。サイコパスという言葉は1891年、ドイツの医師「コフ」によって始めて紹介されたが、その範囲の決め方についての議論が続いた結果、「反社会的な人格障害」という言葉を使い始めてから、次第になくなっている。

(アドバイス〓權峻壽(クォン・ジュンス)ソウル大学・精神科学教室教授、林暎晋(イム・ヨンジン)ソウル大学・麻酔痛み症状医学部教授、金イングァン・ソウル大学病院死体寄贈相談室の職員)



nuk@donga.com